石下●今日は大田原の成田山遍照院さんの境内地をお借りしてお話を伺って参りたいと思います。 女性が活躍をする時代と言われる昨今、栃木県北におきまして女性であり、お寺のご住職がいらっしゃいます。
まずはご紹介とご住職になられた経緯をお願いします。
ご住職●自己紹介はプロフィールの通りです。僧侶になった経緯は、母の生家が安養院で、祖父が住職をしていました。私の母は東京の八丁堀で商売を営んでいた父の家に嫁ぎましたが、父が56歳くらいの時だったか、都会での社長業に嫌気がさし、母の生家を継ぐと言い出して、修行し僧侶に。
まさかの父が坊さんになったわけですが、私はそれより前の20歳くらいの時に一度、祖父の後継としてお坊さんになりたいと思ったことがあります。しかしその時は剃髪が嫌で、悩んだ末に諦めました。
その後、結婚し離婚もし、その頃になると剃髪に抵抗を感じていないことに気づいたので、間髪入れずにその3ヶ月後には修行しに本山に入りました。父の跡を継ぐ形にはなりましたが、義務感ではなくて自分がなりたくて僧侶になりました。
石下●寺院のこだわりとか、こういった方々に来てほしいという思いはありますか？
ご住職●そういったこだわりは特にありません。ただ、自身の修行としても大事にしていることは『夏休み 子ども寺子屋修行』です。
5日間、7：30から11：30まで作務（お寺の掃除）、宿題の時間、工作の時間、お経の練習などの修行の時間、合間合間に休み時間もたっぷりある、ゆるい修行会です。
私自身、純粋に物凄く楽しい。そして、これは私の理想のお寺のあり方なのかもしれないなぁとも思います。
それからこれは自慢なのですが、檀家さんがみんな本当に優しく、そして頼もしいです。私のような者がお寺の住職をしていられるのは、檀家さんの優しさと、本尊のお計らいのお陰に他なりません。
石下●ところで、今後の展望、挑戦してみたいことはありますか？
ご住職●コロナでヨガ教室はずっと休止中ですが、そろそろ始めたいと思っています。ひとまず、お寺で週一の健康体操教室を始めました。
様子を見てヨガも再開したいと思っています。
近い将来には、お寺でのヨガ、気功、呼吸法、さまざまな修行体験（写経、礼拝行、瞑想、滝行）、などを体験しながら心も体もデトックスできるようなリトリートを開催してみたいです。
食事は薬膳（講座も含む）、希望者にはマッサージも受けられるようにしたいと思っています。実際に少しずつ準備し始めています。疲れた人たちが元気を取り戻すためのお手伝いができたら嬉しいです。
僧侶としては見た目も全くお坊さんらしくなく、何かバタバタとしていて、イマイチな私ですが、どんなことも一生懸命に真心を込めて努める、これだけは信念として死ぬまで貫き通したいです。
これしかできないので。
石下●ご住職の人生は、今日の対談からではお伝え出来ないほどの波乱万丈に満ちた人生でございました。そういった人生経験の中で最後に仏門の世界（出家する）を選ぶのには未知なる世界への挑戦をしてみたいという覚悟があったことと思われます。たくさんの苦悩を得てからの大いなる気づきと成長が、出家することだったのだと思いました。
そして、ご自分以外の誰かをも幸せにする選択をされたご住職はまさに〝美しいひと〟です。人間は、幸せになるためにこの世に送り出されてきたものです。 そして幸せとは自分だけが満ち足りることではなく、自分以外の誰かを幸せにすることだと思います。出会いというもの、ご縁というものは生きている時に大切にしていきたいと思います。
ご住職、今日はとても素晴らしいお話しをお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。
成田山遍照院
